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糖尿病の人は網膜症に注意

 糖尿病の患者数は年々増加しており、40歳以上の成人10人に1人が糖尿病とされている。糖尿病で問題になるのは合併症だが、中でも糖尿病網膜症は失明の可能性がある厄介な合併症である。糖尿病患者の30〜50%が合併し、そのうち10%の人は失明の危険性が高い。
 糖尿病網膜症は、進行度によって3つの段階に分けられる。第1段階を「単純網膜症」といい、網膜の血管がもろくなるために多数の出血が出現する。きちんと血糖をコントロールすれば、改善も期待できる。第2段階を「増殖前網膜症」といい、血管がつまって網膜の血流が消失する部位が出現する。この時期は進行を抑えるためにレーザー治療(網膜光凝固術)が必要になる。第3段階を「増殖網膜症」といい、新生血管という正常では見られない、もろい血管が出現する。この時期には、新生血管が破れて硝子体出血が起きたり、網膜剥離が起こしたりして突然見えなくなることがある。この時期には手術(硝子体手術あるいは増殖硝子体網膜症手術)が必要で、治療は難しく失明の可能性が高い。
 このような厄介な糖尿病網膜症だが、失明のほとんどが予防可能である。見にくくなってから慌てて治療しても手遅れのことが多いが、そうなる前に糖尿病と診断された時から定期的に眼底検査を受けることが大切である。

(文責:森秀樹)
(メディカルトリビューン=時事)


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